大ベストセラーとなったトマ・ピケティ教授の「20世紀の資本」を読んでみようと思ったことがある人は多いと思いますが、実際に読み切った方・理解したという方はそこまで多くないのではないかと思います。
なぜならとにかく本の内容が膨大で分厚すぎる!そして分かりづらい!!
ということでもう少し気軽に読んだみたいという方にオススメの池田信夫氏の著書「日本人のためのピケティ入門」を読んでみました。
Contents
結局のところ、どんなことが書いてあるのか?
資本主義社会では歴史的に所得分配の格差が拡大する傾向にあり、それは今後も続くだろうということ。
ほとんどの時期で不平等は拡大しており、戦後の平等化した時期は例外だったというのがピケティの結論である。
結論として、資本主義の根本的矛盾と呼ばれる以下の不等式で表される。
r>g
rは資本収益率、gは国民所得の成長率。資本とは株式、債権、不動産等、全ての資産を表している。
つまり資本収益率が成長率を上回るということ。
資本家の儲けが一般国民の所得の伸びより大きく増えるので格差が拡大する。
おまけに資本ストックは蓄積されて相続されるので、資産の格差はますまず広がる。
まぁすごく簡単に言うと、「労働の給料から生活費を引いた残りを貯金していくだけより、株や不動産等に投資したほうがお金持ちになれるよ〜。そして投資する人としない人との差はドンドン広がっていくよ〜」という話です。
なぜこの本が高く評価されているのか?
ピケティは膨大なデータを基に今までの経済学と全く異なる説を唱えている点。
今までの経済学では、資本主義の発展と共に富が多くの人に行き渡って所得分配は平等化すると考えられてきた。これは資本の生産性が労働を上回れば投資が増えて資本収益率が下がり、労働生産性が近づくと考えられていたから。現実にもクズネッツ等の実証データでは、戦後の所得格差は縮小していた。
しかしピケティの1870年以降の歴史的データによればそれは例外で、資本主義では格差が拡大するのが普通である。資本主義では過去200年間格差が拡大し、今後も不平等が拡大すると考えられます。
資本収益率rが常に成長率gよりも大きくなるのはなぜか?
これはロバート・ソローの新古典派理論で説明される。
労働からだけ所得を得る人々の賃金は、技術進歩によって生産性が上がるのと同じくらいのスピードで上がる。それは経済全体の成長率より少し低い。なぜなら成長率は人工増加率を含むから。この結果、資本収益率が成長率を上回り、格差が拡大する。
例えば、資本と人口を一定とすると、労働者の生産性が毎年1%ずつ上がると国民所得も1%増えるが、人口が1%増えると国民所得は2%増える。この差の1%が資本所得となる。
わかりやすい例としては、日本企業が海外の人件費の安い工場で生産すれば経費が浮いた分の利益が増えるが、その増えた利益によって労働者の給料が増えるわけではなく、日本企業へ投資している投資家に還元される。こうして投資家と労働者の格差が広がっていくわけです。
また、お金持ちの親から子への相続、教育の機会の不平等(高い質の教育を受けるには高額の費用がかかる)、高額所得者の税率が下がったこと等も格差の固定に繋がっているので、なかなか格差は縮まらないわけですね。
ピケティが提唱する政策
更にピケティが最も問題視しているのは、世界の対外純資産は対外債務より1割近く少なく、タックスヘイブン(租税回避地)に大企業や富裕層の所得が逃避している恐れが強く、このような租税競争を止めないと、最上位層の所得が捕捉できず、税制が崩壊すると警鐘を鳴らしている。よって、ピケティは格差を縮める為の政策としてグローバルな資本課税、それも累進的な税が望ましいと提唱しているが、そういう国際協調が実現する可能性は限りなく低いと考えている。
我々ができる対策
この本を読んで再認識することは、やはり労働収入のみに頼らず、投資を行っていくことの大切さです。
税制等は我々にはどうすることもできないので、私達にできることは資産運用について勉強し、自分にあったスタイルで愚直に投資を行っていくということに尽きると思います。
投資をする上で考えがブレることはよろしくないので、この本を読んで投資の大切さを再認識することは良いと思います。内容も分かりやすく、1時間程度で読めるので、興味がある方はぜひ一読を!
しっかり理解したい・チャレンジしたいという方は原著を読んでみるとより説得力があると思います!